カバンの修理
修理の舞台裏見せます(バッグ編)|バッグの角の破れを直すパイピング修理
時折、「値段が高いこと、修理に日数がかかるのはなぜ?」というご質問・ご意見をいただきます。
修理工場に送って修理する場合は、納期が8週間など長期間必要とするものもあり、またお値段も高いものが多いのでお客様が疑問に思われるのも十分に理解できます。
修理に時間(日数)がかかる大きな理由は?
修理に時間がかかる、その大きな理由の1つはそれは、「バッグを一度解体して修理する」からです。
一見その部分だけ修理できそうに見えるのですが、バッグは構造が複雑で表面的な修理が難しく、分解してから修理をする場合が多いためです。
部分解体ができる場合は周囲を一度解いて修理し、部分解体では修理できない場合は全体的に糸をほどいて解体してから修理します。
復元を前提としているため、細心の注意を払って行います。
バッグのパイピング修理
今回ご紹介する修理は、バッグの周囲にある破れた縁(ふち)の修理「パイピング修理」です。
バッグの角にできた破れの補修をする場合、その部分だけでなく1周繋がっているバッグのパイピング(フチ)の全交換が必要になる場合があります。
1)解体|外周の糸を解く
外側のフチ部分全周を交換するのですが、解体は内側から行います。
バッグの内側と外側ををひっくり返し、内側で縫い留めている糸を解いていきます。縫い目を一つ一つ丁寧に解くので時間がかかる作業です。
2)解体|フチの糸を解く
やっとパーツ別に分解できました。今回の修理では本体部分(胴)がとマチ部分、外側フチの3つのパーツに解体しました。今回修理対象の破れている外側フチの部分は芯材を再利用するので、破れている外側の巻いている革を取り外して芯材を取り出します。
バッグの内側と外側をひっくり返し、内側で縫い留めている糸を解いていきます。縫い目を一つ一つ丁寧に解くので時間がかかる作業です。
3)破れた部分のパーツを新たに作製する
破れた部分の革パーツを新たに作ります。
近い色・質感の革を探しフチの芯材に合わせたサイズに裁断します。この革はそのままだと革に厚みがあり芯材に巻くことができないため、革の裏側を薄く削り適切な厚みにする「革漉き」加工をします。長さのある革を均等の厚みに加工するのは技術が必要な作業です。
そして細い芯材に薄くした革を巻き付け縫い止めて、新しいフチのパーツが完成しました。
4)取付作業をします
バッグの本体に作製した新しいフチパーツを縫い付けて固定します。解体したマチ部分のパーツ(カバンの厚み部分)を仮止めします。
5)全体を再び組み立てて縫って完成
本体・マチ部分・新たに作製したフチ部分の3つのパーツを、バッグを裏側にして組み立てて元のステッチラインに合わせて縫い合わせます。裏返したときにシワやよれが出ないよう、ゆっくりと縫い合わせるのは、熟練の職人技が必要となる作業工程です。
最後にこの本体・マチ部分・フチ部分の3つのパーツを縫い合わせた先端をテープで覆い、縫い付けます。このテープは仕上がり部分のほつれを防止し、強度を保ちます。
ここまでバッグを裏側にして作業していましたが、表側にひっくり返し(この時に無理な力をかけず表側にするのも職人技!)仕上がりを確認します。シワもねじれもなく元通りの形です。
お値段が高い理由、それはすべての工程を職人の手作業で修理しているから
今回はパイピング作業の手順を解説しましたが、修理内容によっては、もっと複数の工程を職人の手作業で修理しています。
お値段が高く感じられるかもしれません。お日にちもいただいています。
その理由を少しでも知っていただけると嬉しいです。
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