修理事例のご紹介

紳士靴の修理事例:ヒドゥンチャネルでのオールソール交換

さまざまな修理事例を、どうやって修理するのか、どのような過程を経ているのかを動画とともに解説します。

ご依頼の概要

ブランド

SCOTCH GRAIN(スコッチグレイン)

ご相談内容

穴が空いてしまったソール交換

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修理方法

穴が空いてしまったソールを"ヒドゥンチャネル"でオールソール交換します

「ヒドゥンチャネル」とは、底面に縫い目が出ない特殊な仕上げ方のことです。
今回は、新しいソールを貼った状態からご紹介します。

STEP1.ドブ起こし
出し縫いをするためにドブを起こしていきます。
底面に水を付け、革を柔らかくして加工しやすくします。
何度か繰り返して水分を浸透させます。
底面サイドから1mmほどの厚みを残し、切り込みを入れていきます。
POINT:一歩間違えると革が切れてしまうので慎重に丁寧に作業していきます。
革が硬いので、段階を分けて切り込みを深くしていきます。

STEP2.出し縫い
出し縫いの溝を掘っていきます。
何度か繰り返して、ステッチが埋まるくらいの溝を作ります。
作った溝に沿って出し縫いのステッチをかけ、しっかりと溝に収まりました。

STEP3.ドブ伏せ
ステッチ部分を叩いて平らにし、ヤスリをかけます。
起こしたドブを元に戻すクセをつけ、接着剤をつけて乾かします。
接着の前にもう一度水をつけて、革を柔らかくし、戻しながら接着します。
叩いたり押し付けたりして、元のソールのカーブに合わせながらしっかりと貼り合わせます。
ここまでがヒドゥンチャネルの技法となります。

ソール着色の前に、ヒール部分を進めておきます。
接着剤を削って、塗っていない箇所を釘で固定します。

STEP4.ソール着色仕上げ
一度、表面を削って色を乗せやすくします。
今回のご依頼はライトブラウン色です。
塗料をスポンジに取り、全体に馴染ませ、何回かに分けて塗り込んだら、ワックスをつけてツヤを出し、更に手作業で丁寧に磨きます。
コバの着色に入りますが、着色前に断面を削って整え直します。
ヤスリで仕上げて、角は面取りをします。
コバを塗っていきますが、このとき、はみ出さないように一気に塗り、底面と同様にワックスで磨きます。
最後に全体を手作業で磨いて底面の完成です。

STEP5.ヒール取り付け
積み上げとトップリフトを圧着し、形を整えたら、ヒールの内側を先に仕上げます。
ソールとの隙間ができないように削り、底面に合わせてセットして圧着します。
ヒールを釘で固定し、削って形を整え、細かいヤスリで仕上げます。

STEP6.ヒール着色仕上げ
底面と同じく表面をヤスリがけし、ライトブラウンの塗料を塗り込みます。
ワックスでツヤを出し、磨きます。
釘でヒールを固定し、着色前に再度ヒールを整えて黒色に着色したらワックスで磨きます。
最後にかかとにギザ模様をつけて完成です。

ヒドゥンチャネルのオールソール交換で、ドレッシーなソールに仕上がりました。
オールソールのオプション仕上げ、ご相談ください。

専門用語解説

修理工程で出てくる専門用語について解説します。

  • ドブ起こし:靴底の縫い目を隠すため、靴底の革の表面に切れ目を入れて端の革を起こす作業
  • ドブ伏せ:ドブ起こしの工程で起こした革を伏せて、出し縫いの縫い目を隠す作業

修理概要

  • 修理メニュー:オールソール
  • 金額:税込27,500円
  • 納期:約4週間(店舗により前後します)

※公開日時点での情報です