靴の修理
靴底の"丸ごと取り替え"で、いい靴を長く履く
「オールソール」という言葉、靴好きのかたはご存じかもですが、ふつうは馴染みのない言葉ですよね。自分も革靴に興味を持つまで知らなかった言葉です。
オールソールとは、靴底を"丸ごと"交換する修理のことです。靴の上側(甲のほう)はそのままで、靴底をまるまる交換します。
この写真はグッドイヤー製法といわれる製法で造られた革靴ですが、つま先はすり減り、靴底には穴が空いてしまい中の素材であるコルクもボロボロになっています。さらに縫い目がほぼ切れてしまっている状態。
前底はソール修理でソール素材を覆うようにして貼り付けて修理するのも可能ですが、それは表面的な修理です。靴底の傷み具合によっては丸ごと交換して、もっとこの先長く履けるようにしてしまうのもありです。それなりのお値段の靴はアッパー(靴の甲の部分)が丈夫であることが多いので、靴底を交換すれば長年、ものによっては10年以上履くことができるんです。
工程公開!靴の丸ごと交換・オールソール
なかなかご覧いただける機会もないので、ここでご紹介します!(大胆で細かい技術なので、日数がかかります)
まず、元のレザーソールを剥がして、新しいレザーに交換します。外した状態がこちらです。中まで傷みが・・・
中のコルクも傷んでいるので交換します。コルクを新しい物に交換し・・・
その上に、レザーソールを取付。
その後、縫うための溝を掘ります。この溝に、ミシンで縫っていきます。
その溝に合わせてウエルトと底材を縫い合わせて固定します。
最後にヒールを取り付けます。積み上げ部材とヒール部材を取り付けていきます。
そしてようやく完成・・・!
持ち主の履き心地を想像しながらの作業
このオールソール修理の仕上げるポイントは「履き心地を崩さない」こと。
例えば、コルクを入れる際も盛り過ぎないようにする、とか。
特にヒールの位置・高さ・バランスなど、元の状態、持ち主のはき心地を想像しながら近づける事が大切です。それが異なると、履いた時の異和感に繋がってしまいます。
修理というと技術はもちろん大切なのですが、こういった「履いている人を想像する」ことができると仕上がりが変わってくるのが面白いところです。
高級靴を長く履きたい方はときどき靴の裏を見てみませんか。「履き捨てる」ではなく修理しながら大切に履いていくことで、靴への愛着も増します。なにより靴を履き捨てていくよりもエコですよね。
実際、自分も10年以上履いている靴はそれほど高いものではないですが、6年目で一度オールソールをして、そろそろ2回目を考えているところです。
ミスターミニットでは「靴ともっと長く大切に付き合う」お手伝いが出来ればと思います。もしそういった靴がありましたら、ぜひご相談ください。